顎のずれと噛み合わせ・噛み合わせ(咬合)治療の実態

顎関節は身体の中でも特殊な関節で、下顎は歯列の位置に合わせどんな位置でも移動できる構造になっていて(上顎は頭蓋骨の一部になるので自由に動くことはできません)、生理的に無理な位置に歯列があっても下顎を移動することで噛み合うことができてしまうので、その分顎関節に負荷をかけてしまいます。

 

 

顎関節は側頭筋の一部と下顎骨の下顎頭の間に関節円板が介在した状態で構成されています。(下図)

 

 

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歯の噛み合わせが正しい場合は、上下の歯が噛みこんだ時に歯の凹凸が下顎を前上方に動かす斜面どうし接触する組み合わせで噛みあう状態で、下顎頭が関節円板を前上方に押し上げ、顎関節が最も安定した状態になります。(下図)

 

 

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噛み合わせが悪い場合、上下の歯を噛みこんだ時に歯の凹凸が下顎を後上方に動かす斜面で接触してしまう状態になり、下顎頭が関節円板の後上方に潜り込んで圧力をかけ、関節円板を前方に押し出して破壊していきます。

 

歯ぎしりや食いしばりによっても、歯がすり減り上下の歯と歯の間に隙間がなくなっていき、噛み合わせの高さが不足します。

 

その結果、顎関節部でも関節内で関節円板の入る隙間がなくなり、前方に飛び出して戻らなくなります。(下図)

 

 

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顎関節症がこの状態に進行すると口を開ける時に2~3センチまではスムーズに動きますが、それ以上開けようとすると引っ掛かりが出て痛みや音と振動が出たりします。

 

 

この段階で顎関節症を放置すると、側頭骨と下顎頭の骨どうしがあたり続けて骨が変形したり、頭蓋骨の歪みが顕著になり、顔の左右差も目立ち歪んでいきます。 

 

 

また、上下の歯と歯がしっかりと綺麗に噛み合っていたら問題がないように見えますが、『顎関節のずれ』があればそのずれた顎関節に合わせて身体だけでなく噛み合わせも変化していきます。

 

 

歯科では、安定した良い顎の位置を中心位といい、上下の歯が噛み合う位置を中心咬合位といい、それぞれ基準が違っています。

 

 

中心位とは口を軽く閉じた状態で顎関節が最も自然な位置関係にあることで、歯の噛み合わせとは関係なく、口を開け閉めする筋肉がリラックスした状態にある顎の位置のこと。

中心咬合位とは歯の噛み合わせのみで決まる顎の位置(しっかりと噛んだ状態の顎の位置)で、顎関節や筋肉の状態は関係なく、歯並びや噛み合わせが悪くても、その状態で噛んだ位置が中心咬合位になります。

 

 

中心位と中心咬合位がずれていると、食事の時や歯ぎしり・食いしばり・噛みしめなどをしている間は、常に噛む筋肉のバランスが崩れていて緊張状態になり、全身のバランスも崩れます。

 

 

本来の正しい噛み合わせとは、顎の位置が顎周囲の筋肉がリラックスする位置にあり、本人が心地良いと感じる場所でしっかりと良く噛めて、しかも全身が安定する場所になりますが、顎(顎関節)の状態が非常に安定している人と不安定な人がいて、不安定な人は顎の位置によって噛み合わせの位置が日々変化してしまうため、正しい噛み合わせの位置(理論的には中心位と中心咬合位が一致する場所) を正確に取ることはたとえ咬合を熟知している歯科医師でも困難です。

 

 

長年にわたり歯科技工士として顎関節症の患者様の治療に携わっていた経験から、適切な噛み合わせの治療を受ければ、顎関節症をはじめ頭痛、首の痛みや肩こり、めまい、耳鳴り、自律神経失調症、不定愁訴など、身体にあらわれている不調が改善することがわかりましたが、残念ながらすべての歯科医師が噛み合わせ(咬合)に対して熟知しているわけではなく、また、歯科治療をしたから改善できるというような簡単なものではありません。

噛み合わせ治療や歯列矯正を行っても不調が良くならなかったり、余計にひどくなってしまったとしても、削ったり抜いたりした歯を元に戻すことはできません。

 

 

噛み合わせ治療にはリスクと高額な治療費が伴うのです。

 

 

保険治療は、厚生労働省が定めた保険制度に準じて行われる診療で、診療費の負担が一部免除されるメリットがありますが、治療内容や治療方法、使用する薬や技工物の素材などに制限があります。それに対し、自費診療は、素材や作製方法に制限がないのでより高度な機能性や審美性を追求できますが、その分治療費は全額自己負担となるため高額になります。

 

 

 

 

【噛み合わせ(咬合)治療の実態】

 

噛み合わせの治療には、歯の形を変えずにスプリント自体を調整して正しい噛み合わせの位置を導き、身体の不調がでない噛み合わせの位置を探ってく治療法で、着脱式のスプリントを使用する方法と接着式スプリントを使用したスプリント療法というものがあります。

※歯科で咬合治療に用いるマウスピースは硬いプラスチック材料(PET等)のもので「スプリント」と呼びます。柔らかいプラスチック材料(EVA等)のマウスピースは削ることしかできず、レジンを盛り足すことができないので、咬合治療には不向きです。

 

 

 

まずは、着脱式の咬合スプリントを使用した治療法の場合 

 

 

 

 

歯に被せるマウスピースなので、スプリント自体に着脱するための弾力性があり、その弾力性は歯自体が持っている生理的な可動性を超えるほどの動きがあるため、大まかな顎の位置をコントロールすることはできても、噛み合わせの位置を精密に特定することは困難です。

  

 

仮に、スプリントをミクロンの世界で調整し、正しい顎の位置や噛み合わせの位置を特定できたとしても、スプリントで特定した位置を本物の補綴物(被せ物、詰め物)に置き換える段階で、ミクロンどころか数ミリの誤差が出てしまいます。

補綴物は、歯型模型を咬合器に装着して製作するのですが、どんなに優秀な歯科医師と歯科技工士が組んだとしても、スプリントで見つけ出した咬合の状態を寸分の違いなく本来の歯(被せ物、詰め物)に置き換えることは限りなく不可能です。


 

 

つぎに、実際に私が歯科技工士として過去に携わった接着式の咬合スプリントを使用した治療法の場合

 

 

赤い点は正しい顎の位置を特定するために設計した接触点です。 

 

 

 

 

ワックスで製作(上の画像のグレー部分)した状態を超硬質プラスチックや金属で仮歯に復元します。

 

 

 

 

リバイブスプリント

 

 

このように歯の一本一本に超硬質プラスチックや金属の仮歯を歯に接着させ、そのプラスチックや金属を調整しながら、不調がでない正しい噛み合わせの位置を特定し、安定した段階で1本づつ本物の被せ物に置き換えるというものが接着式の固定性スプリントを使用した治療です。
※現在はその歯科医師も引退されており、このような治療にも携わっておりません。

 

 

本物の補綴物に置き換えてからも歯が削れたり、位置が動いたりしますので、口腔内で調整を繰り返してメンテナンスをすることを続けるという、時間も費用も根気も膨大にかかるのが現実です。

段々と良くなる方向に進んでいくわけではなく、良くなったと思えばまた不安定になって悪い状態になることだってあります。

それでも、歯科医師を信じて根気よく治療を続けていくしかないのです。

ですから、患者と歯科医師の信頼関係が築くことができるかどうかも治療にはとても大切です。

 

 

根気よく何年も通う必要があり、このような治療は保険治療の中ではできませんので、自費治療となり治療費も何百万もかかります。

現実的な話、このように何年も何百万もかけて治療ができたとしても・・・

 

 

補綴物も天然歯も使用していくうちに、削られていきます。(経年劣化は避けられない)

 

 

使用する材質にもよりますが、補綴物は少なくても年間何十ミクロンも削れていきます。

削れるだけではありません、治療した補綴物の寿命は平均で5年から長くても10年でしかなく、それ以上長持ちする歯を製作することの難しさもあります。

歯を支えている土台である歯根、歯茎の状態も関係してきます。(加齢とともに必ず変化します。)

 

 

どんなに時間とお金をかけて咬合を数ミクロンで合わせたとしても、永遠にその状態のままではいられないのです。

 

 

私は咬合を数ミクロンの単位で合わせなければ身体に不具合が起きてしまうような状態を『咬合過敏症』と呼び、そうした咬合過敏症の方にとっての咬合治療の難しさを実感してきました。

 

 

正しい噛み合わせの位置や顎の位置がずれることで、身体には歪みが発生し、様々な不調に発展しますが、すべての方が何ミクロンの誤差があった段階で不調になるようならば、一般的な歯科治療を受けたすべての方が不調になりますが、多くの方は大きな影響を受けません。

数ミクロンを合わせなければ身体が健康でいられない状態となってしまったことが問題なのです。

 

 

歯科技工士として咬合治療の難しさを30年に渡り体験してきたからこそ、今のバイトバランス整体院があります。

ご自分のお身体を知り尽くし、安定する身体(顎の状態)にすることが必要であると考えます。

 

 

上下の歯と歯は、咀嚼や嚥下、会話時に接触しますが、このときに起こる上下歯列の接触は瞬間的な接触なので、接触時間を全て足したとしても、1日24時間中20分程度の接触時間で、それ以外の時間は歯と歯を噛み合わせていないのが正しい状態です。

 

 

噛み合わせ不良でも食事時などに噛む程度の時間では体への歪みや不調が発生するに及ぶ力とはなりませんが、歯ぎしりなどの強い噛みしめる力や歯列接触癖のように長い時間歯と歯を接触させている癖があれば、噛み合わせ不良に伴う顎関節への影響により、歪みや様々な不調を発生させてしまいますので、睡眠時や無意識下で起こす歯ぎしりやくいしばり・噛みしめによる悪影響を防止するしていくことが何より大切です。

 

 

噛み合わせ(咬合)に惑わされない身体つくりをしていきましょう。